最終更新:2026年8月18日(観光庁の四半期発表にあわせて更新予定)
▶︎こんな方に向けた記事です。
観光庁が発表した最新の統計をもとに、数字の変化と、それが店舗の会計現場にどうつながるかを整理します。
先に数字だけ知りたい方へ
・2026年4-6月期のインバウンド消費額は2兆5,096億円で、第2四半期として過去最高を更新
・1人当たりの旅行支出は24.4万円まで上昇(1-3月期は22.1万円)
・2026年通年の訪日客数は約4,200万人と、2025年を下回る見込み
・つまり「人数は減っても、1人あたりの消費額が伸びている」局面に入っている
訪日客数は減っても消費額が高水準を保っている理由
ポイント:客数減・単価増という、これまでと逆方向の動き
観光庁が公表した2026年4-6月期のインバウンド消費動向調査によると、この期間の消費額は2兆5,096億円。前年同期比では0.2%増とほぼ横ばいですが、第2四半期としては過去最高を更新しました。
数字だけ見ると「相変わらず好調」に見えます。ただ内訳を見ると様子が違います。1人当たりの旅行支出は24.4万円で、1-3月期の22.1万円から明確に上昇。一方で2026年通年の訪日客数は約4,200万人と試算されており、2025年をおよそ70万人下回る見込みです。
訪日客数と消費額の四半期推移
※Q1=1-3月期・Q2=4-6月期・Q3=7-9月期・Q4=10-12月期
出典:観光庁「インバウンド消費動向調査」、日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数」各期発表資料
このグラフを見れば、直近3四半期で何が起きているかが一目で分かります。訪日客数は25Q4の1,103万人から26Q1は1,068万人、26Q2は1,040万人と2四半期連続で減少。一方で消費額は2.53兆円→2.34兆円→2.51兆円と、上下はありながらも2兆円台後半の高水準を保っています。
四半期ごとに見ると、単純な右肩上がりではありません。2024年半ば以降は、上昇と下落を繰り返しながら水準が底上げされる動きが続いています(2023年から2024年前半にかけては目立った下落なしに伸びていました)。年単位で見ると、「その年で最も低い四半期」は2023・2024年が1-3月期だったのに対し、2025年だけ7-9月期でした。谷の時期自体が年によって動くのは、単純な季節要因だけでは説明がつきません。
2025年7-9月期が谷になった理由は、ニッセイ基礎研究所の分析で確認できます。訪日客数自体は前年同期比+11.4%と増えた一方、1人1日当たりの消費額は約2割減少しました。円高傾向と高級ブランド品の値上がりで「日本は安い」という割安感が薄れたことが背景で、特に中国・香港で単価の減少が目立ったとされています。つまり客数ではなく、1人当たりが使う金額の目減りが主因です。2024年7-9月期についても、1人当たり旅行支出が4-6月期の23.9万円から22.3万円へ下がったという事実は確認できますが、その背景についてはこの原稿の調査範囲で確認できる一次情報が見当たらなかったため、事実の記載に留めます。
つまり「来る人は減っているのに、使う金額は増えている」という、これまでのインバウンド需要とは逆方向の動きが起きています。
「量から質」への転換が、会計の現場に意味すること
ポイント:1件あたりの会計金額が上がるほど、免税手続きの重みも増す
1人当たりの支出が増えるということは、単純化すると1回の会計金額が大きくなるということです。特に免税対応を行っている店舗では、購入金額が大きいほど免税書類・パスポート確認にかけられる時間の余裕が小さくなります(会計自体は1回のままで、1回あたりの処理内容が重くなる、という関係です)。
観光・レジャー目的に絞ると、1人1泊当たりの支出は平均3万4,058円で、主要5市場(中国・韓国・台湾・香港・米国)の1泊当たり平均(2万8,222円)より高い水準になっています。これは免税対応の有無が、会計スピードに直結しやすい客層が増えているとも読めます。
レジそのものを入れ替える必要があるという話ではありません。ただ、パスポート読み取りや免税書類発行にかかる手間が「たまに発生する例外処理」から「日常的に発生する処理」へと重みを増している、という変化は押さえておく価値があります。
国・地域で分かれる消費傾向
ポイント:最大市場は米国、中国は人数減でも単価は上昇
2026年4-6月期を国・地域別に見ると、消費額の構成比は米国が3,848億円(15.3%)で最大。台湾3,639億円(14.5%)、中国2,592億円(10.3%)、韓国2,589億円(10.3%)、香港1,452億円(5.8%)と続きます。
※消費額シェアの国別内訳は上位5カ国・地域までが観光庁の公表範囲で、残り43.8%の内訳(個別の国・地域別シェア)はこの速報では開示されていません。
視点を変えると:1人当たり旅行支出が高い国・地域
消費額の”シェア”では上位5カ国に入らない国が、1人当たりで見ると上位に来ます。2026年の調査からメキシコ・中東が新たに調査対象に加わり、早速上位に顔を出しました。
全体平均は24.4万円。出典:観光庁「インバウンド消費動向調査2026年4-6月期(1次速報)」
上の2つのグラフは矛盾しているわけではありません。「消費額シェア」は人数×1人当たり支出で決まるため、1人当たりが高くても、そもそもの訪日者数が少なければ全体シェアでは上位に出てきません。メキシコ・中東・英国・ロシアは、まさにこの「1人当たりは高いが人数は少ない」パターンに当てはまります。
では、なぜこれらの国・地域は1人当たり支出が高いのか。同じ調査には平均泊数のデータもあり、英国14.1泊・メキシコ13.6泊・中東12.5泊・ロシア10.8泊と、全体平均の8.7泊を大きく上回っています。1人当たり支出は「1泊あたりの単価」ではなく「1回の旅行の合計額」なので、滞在日数が長ければ宿泊費・飲食費が積み上がり合計が大きくなるのは、計算上当然の帰結です。
当店の見立て(意見)
メキシコ・英国・ロシア・中東はいずれも日本から距離が遠い長距離市場です。移動コストが高い分、1回の来日に複数都市・複数目的を詰め込みやすく、結果として滞在が長期化しやすいのではないかと当店では見ています。近距離のアジア圏が短期滞在を繰り返す動きとは対照的です。
なお「2026年の調査から新たに対象に加わった」というのは、市場が急に伸びたという意味ではありません。2025年以前はメキシコ・北欧・中東が「その他」に一括りにされ個別の数字が存在しなかった、観光庁の集計区分が変わったというのが正確な理解です。
中でも興味深いのが中国からの客層です。訪日者数自体は減少傾向にありますが、1人当たりの旅行支出は前年同期比+9.4%と伸びており、観光・レジャー目的の1泊当たり買物代は全国籍・地域平均の1.7倍に達しています。
つまり「人数は減っても平均単価の高い客層は残る・むしろ厚くなる」という構図です。国別に見ても、記事冒頭の「客数減・単価増」という構図がそのまま繰り返されていることが分かります。免税対応の窓口を持つ店舗にとっては、来店数の増減以上に、こうした客層構成の変化を見ておく意味があります。
レジ周りの見直しを検討するなら
ポイント:制度対応と機器の話は、業種別に整理したほうが早い
当店の見立て(意見)
季節の波があるということは、繁忙期(10-12月期)に免税対応で詰まると機会損失も繁忙期に集中するということです。当店としては、閑散期(1-3月期)のうちに機器・運用を整えておくのが合理的だと考えています。
ここまでは統計の話でしたが、実務としては「2026年11月1日施行の免税リファンド方式にどう対応するか」「パスポート読み取りをどう組み込むか」という具体的な検討につながっていきます。宿泊施設向けには、混雑対策とあわせて整理した記事があります。
複数店舗・複数拠点での導入をまとめて検討したい場合は、大口注文の窓口もご利用いただけます。
よくある質問
Q. この数字は今後も伸び続けるのでしょうか?
A. 観光庁の四半期発表を見る限り、消費額は波を伴いながら高水準を維持しています。ただし今回取り上げた「客数減・単価増」という構図が今後も続くかは、次回以降の発表を見て判断する必要があります。
Q. 免税対応をしていない店舗にも関係がありますか?
A. 直接の免税手続きがない場合でも、客単価が高い客層が増える傾向は、会計時間や接客対応の設計に影響します。
まとめ
ここまで見てきた数字は、すべて1つの現象につながっています。訪日客数は減っているのに、消費額は高水準を維持しているという事実です。
四半期の推移を見ても、単純な右肩上がりではなく、2024年半ば以降は上昇と下落を繰り返しながら水準が底上げされています。国別に見ても、消費額シェア上位の顔ぶれが入れ替わり、シェアでは目立たない長距離市場が1人当たり支出で上位に来る。どの角度から数字を見ても「人数より単価」という同じ構図が繰り返し出てきます。
店舗側にとっての意味はシンプルです。来店数の増減だけを見ていると、この変化は見えません。具体的には次の3点が、客単価の伸びに応じて変わるべき部分です。
これが、客数ではなく客単価の変化を前提にした見直しの中身です。
複数店舗・複数拠点でまとめて相談したい場合は、見積もり依頼の窓口もあります。


