スマートフォンやタブレットを使った決済サービスCoiney(コイニー)は、”すべては「かんたん」のために。”をコンセプトに作られた丸くて柔らかい印象のプロダクト。サービスの変遷や展望をコイニー株式会社 代表取締役 佐俣奈緒子さんにインタビューしました。
決済のマッチングが噛み合っていない日本
インタビュアー(以下「イ」):
Coineyについて教えてください。
コイニー株式会社 代表取締役 佐俣奈緒子さん(以下「佐俣」):
設立は2012年3月です。サービスインしたのは、いまから1年半ぐらい前の2013年4月で、準備に1年ぐらいかけました。設立当初から作るものは一貫してひとつだけで「スマートフォン決済」です。iPhone、iPad、Androidに対応していてイヤホンジャックにリーダーをさして決済の端末に使います。
イ:どうしてスマートフォン決済のサービスを立ち上げようと思ったのですか?
佐俣:元々はアメリカに本社があるPayPalというオンライン決済の会社で働いていました。アメリカと比べると日本は支払い方法がたくさんあるんです。クレジットカードはもちろん、Suicaや、おサイフケータイ、代引きなど日本独自の支払い手段があることに気がつきました。しかし、日本は現金市場と言われていますよね。手段はたくさんあるのに、使える場所が限定され過ぎていて、結果的に現金市場になってしまっています。つまり新しいソリューション提供すれば、そもそも支払手段はあるので、マッチングしてもっと市場が活性化すると考えました。
オンライン決済とリアルの決済の2つ方法があって、どっちを変えるとより生活が変わるかと考えたところ、リアルに変化を起こした方が自分の生活も変わるかもと思いました。その時ちょうどスマートフォンとかタブレットが日本でどんどん浸透しているタイミングで、そういう端末って必ずイヤホンジャックが付いてるんですね。そこを使うと汎用的な機械ができると思いスタートしました。
最短2日で利用開始、毎月6回の入金サイクル
イ:クレジットカード決済の導入って面倒なイメージがあるのですが…。
佐俣:通常店舗にクレジットカード決済を導入しようとするとまずは紙の申込書を書いて、そのあと審査があります。その審査が厳しくて長くて、やっと通ったと思ったらそこで初めて、「手数料は◯◯%でお使いください。」と案内され、使い始めるという流れでした。手数料は審査が通るまでわからないブラックボックスです。
コイニーの場合、手数料はどんな業種・店舗でも一律で公開しています。これはスマートフォン決済っていう市場ができたことによってできた文化だと思います。サービスを導入する店舗の方々にとってわかりやすくなりました。
また入金のサイクルを月6回締めて、6回お支払いしています。どんどんキャッシュを回すことは中小企業にとってのメリットです。そうすることで、クレジットカード決済のハードルが下がりました。また、いままで引っかかりがちだった審査の部分では、きちんと審査の項目を作ることによって、きっちり審査をしながら2営業日で実施することでスピード感が生まれました。
イ:どういう利用者の方を想定してましたか?
佐俣:当初、iPhoneから始めたので、そういったスマートフォンを持っている20代30代前半ぐらいの方をイメージしていました。東京から広がっていくと考えていましたが、実際始めてみると全然違っていて、首都圏と地方で1対1ぐらいの比率だったんです。カードの影響が届かなかったようなところや、いままで高い料率で使っていたというような方たちが地方にたくさんいらっしゃったということだと思います。
当初からズレてないところでいくと、業種問わず少人数でやってる店舗が大半を占めています。少しずつ増えているのが、1店舗で入れてみて新規店舗を増やすとか、実は複数店舗持ってるという方が多くなってきています。
白くて丸いアイコニックなプロダクトを目指した
イ:クレジットカードリーダー自体のコンセプトや耐久性について教えてください。
佐俣:気をつけたことがいくつかあって、まずアイコニックにしたいということ。名前はわからなくても白くて丸いアレと覚えてもらえるように丸い形は最初から決めていました。またサービス名の「Coiney」はコインとマネーの造語だったのも掛け合わせて、コインや硬貨をイメージしました。
金融サービスって硬い・冷たい・わかりづらいと思われがち。コイニーリーダーはプロダクトの角を全部面取りして丸みを持たせています。手に取ったときに痛くないという感覚が重要になるんじゃないかと感じて気をつけました。
イ:導入する際に気になるセキュリティについてはいかがですか?
佐俣:基本的に既存の決済端末、レジの横にある端末となんら変わりがないセキュリティの強化は保っています。しかし手軽さを出したことで、心配される方はいらっしゃいますね。
もちろんクレジットカードリーダーのなかには個人情報は残りません。クレジットカードを通したらすぐに情報は消えるので、基本的に端末の中にもクレジットカードリーダーのなかにも一切残りません。そしてクレジットカードリーダーを通した瞬間に暗号化をしてそのままクレジットカード会社に送るので、仮にその間でデータを抜かれたとしても、その情報はわからないようになっています。
かわいさと信頼性のバランスが難しくて、ある意味おもちゃっぽいと感じる延長で不安視されるところがあるのかもしれません。もうひとつはスマートフォンに対する漠然とした不安感。また、見かけたことがあるかないかの差かなとも思っていて、もしコイニーが普段よく行くコンビニに置いてあれば、なんとなく安心だろうと刷り込みができるはず。でもいまは中小店舗に提供してるので、お店に対する信頼度と私たちのサービスに対する信頼度が両方とも大企業が使うほどないようで、日常の中でもっと見かけるようになると安心するんじゃないかなと考えています。
イ:申し込みや審査について
佐俣:申込みは基本的にはオンラインです。PCやモバイル、タブレットなどでお願いしています。ただ申込みの経路や、あるいはお客様が初期設定の最中に、操作方法が途中わからなくて止まってしまったときなどのために、紙の申込書も用意していて、その場合は書いていただいてFAXで受け付けています。
届いてすぐに利用開始できるぐらい簡単に設計していますが、疑問点や不安点がある方もいらっしゃるようなので、リーダーが届くタイミングで、「困ったことはありませんか?」というお電話をしています。実際そこでは困ってなくても、それによってアクティブ率がすごく変化をすることがわかったので、なるべく電話でコミュニケーションを取るようにしています。
イ:利用し始めてからのサポートは?
佐俣:平日10時~18時で対応しています。最初に電話しているので電話してくださる方もいらっしゃいますし、メールでももちろん対応しています。電話サポートが文化として根付いていると思いますし、何がわからないかをメールで説明しづらいこともあるんですよね。こちらから先に働きかけることによって、何か困ったら気軽に連絡していいんだ、っていう空気感になるので、電話サポートは重視しています。
コミュニケーションを取りながら信頼を積み重ねる
イ:サービスを始めてから達成できたこと、こうしていきたいという展望について教えてください。
佐俣:元々こういうものが作りたいっていう形は、サービスをスタートした段階である程度、形になったと思っています。そこから広がっているかと考えると全体のスピードが遅いので、サービス提供できている範囲ももっと広げないといけないですし、一方で市場全体でもまだまだ世の中が変わる程動いてないので、そこについてはスピードを上げていかないといけません。
さまざまなお客様に使っていただくようになり、逆にどうやって見つけてくれたのかなと思うことも(笑)。山形県の80歳ぐらいのおじいちゃんが申込んでくれて、理由を聞いたら、ダイレクトメールを見て気になって申込みをしたと教えてくれました。すごいサービスがあったから店舗の現状を変えていきたいって思っていただけるぐらいのものになってよかったです。たどり着き方もさまざまで、「息子に聞きました。」みたいな人もいれば、「新聞で見た。」などいろいろあって、そこでサービスに触れたときにお客様自身が意志決定をして申込んでいただけてすごくうれしいです。
もっとアプリの存在をわかりやすくしたり、サービス自体の認知度を上げたり、「サービスが安全で安心なものです。」と、お客様に伝えていかないといけないと考えています。コミュニケーションを取りながら信頼を積み上げていくしかありません。
現金以外の決済手段をお店が持つというところは、ずっと続けていきたいと思っているので、キャッシュレスの取引に対していろいろ形でサービスを提供するっていうのは、ずっとやっていきたいです。
イ:ありがとうございました!
取材協力: コイニー株式会社
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